公開日 2021年04月09日(Fri)
4月9日(金),新入生オリエンテーションの中で卒業生講話が行われました。
講師は第1期卒業生の泉 一男さんです。泉さんは喜界高校創立当時を振り返り,校舎は藁葺き屋根の床のない土間で,雨が降れば雨水が流れてくるような教室で学んだことを話されました。
「物がない貧しい時代だったが,皆よく勉強した。貧しいから皆で物を分け合い共有して,人の心は和やかだった。高校時代は社会に羽ばたく出発点。将来どのような進路を歩むのか,自分の頭で決めてほしい。」だからこそ,環境の整った今,新入生にはよく学んでほしいという泉さんの気持ちが伝わります。
「教育の目的は『真・善・美』を理解できる精神をつくること。」『偽物』を見抜き,『善悪』を見極め,『醜態』を恥じる。そのような判断力は必死に学んだ者しか得られないということなのでしょう。
沖縄の米軍キャンプの通訳として勤務された泉さんは,英語(外国語)学習の重要性もご指摘なさいました。「英文法が後になってわかってくるくらい,必死に単語を覚え,生の英語に接し,自分の思いを伝える機会をたくさん持つことが大事。」
本日,泉さんとともにお話しいただく予定だった第1期卒業生の喜久秀人さんからは,高校時代に泉さんから譲ってもらったという英和辞書をお借りしてきました。
70年余り前の辞書の全てのページにアンダーラインや書き込みがあり,どれほど懸命に学んでいたのかが鮮明に想像できます。ボロボロになった1冊の英和辞書にずっしりとした重みを感じます。無駄を極限まで省くような今流行りの学習法の軽さが逆に際立ちます。
“Slow and steady wins the race.”表紙裏に消えかかった文字が見られます。「急がば回れ」と訳されることわざですが,「物事を継続して着実に一歩一歩進めていくこと」の大切さを表しています。当時の喜久青年の思いが想像できます。
今回のオリエンテーションで,大先輩たちのお話や辞書から,新入生の気持ちやモチベーションが揺さぶられたとしたらうれしい限りです。泉さん,喜久さん,後輩たちのためにありがとうございました。